ウサギのこげさんが腰を抜かすのを、二度見たことがある。
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こげさんと田端の病院に行った帰り道。
山手線の某駅構内、コンクリートの剥がれ落ちた斜面に、シダだのオオバコだのがびっしり覆っているのが、停車中の車両の中から見えた。
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わたしはこげさんを目の前に座らせた。
「で、そのおなかのチャックはどうしたの? いつ縫い付けたの?」
こげさんは、わたしから目を逸らし、口先を少し歪ませて俯いている。
耳が互い違いに立っている。
こげさんが都合の悪いときにする仕草だ。
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ここ数年同居しているウサギのこげさんは、二年前に事故で右目を痛めて以来、朝晩と目薬を差すのが日課です。
いつも田端の病院で出してもらっている目薬も、残り少なくなってきたので、もらいに行かなければなりません。
でも、今日は自宅のフローリングの修繕に業者さんが来るため、家を空けられないのです。
そこで、こげさんも病院にはなんども連れて行かれて道を覚えているだろうから、とうとう一人で行ってもらうことにしました。
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恵比寿で昼食を食べ終え、ぶらりと駅ビルの本屋に立ち寄りました。
普段は文庫本を読んだりしないのですが、たまには太宰治でも読もうかと、文庫本コーナーへ。
と、太宰治と同じタ行の棚に並んでいる、武田百合子の『ことばの食卓』が目に入りました。
もともと、武田花(武田百合子の娘)の写真とエッセイが好きで、わたしも二十代の頃は彼女の真似をして、仕事場の行き帰りや昼休みなどに、肩から写真機を提げて街中を歩き回っては、野良猫のモノクロ写真を取り溜めたものです。
そのうち、フィルムや印画紙の現像に使う定着液の匂いを嗅ぐと、軽い喘息を起こすようになってしまい、写真からは遠ざかってしまいましたが。
そんなきっかけで、武田花の出版物を読み漁っているうちに、ああ、そもそも彼女を産んだ武田百合子という女性がいて、さらに、父親は武田泰淳なのか、と知った次第。
結局、太宰治の文庫本ではなく、武田百合子の『ことばの食卓』を購入。
店員さんに橙色のカバーを掛けてもらいました。
しばらくは、いつも着ているウィンドウブレーカーのポケットに入れて持ち歩つもりです。
※以前に某ブログで投稿したものを再掲載しています。
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